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視線

第27章 15年後

梨花は 大学一年生になっていた。

幼稚園の終わりから 高校まで九州に住んでいたが 今は東京の大学に通い 一人暮らしをしていた。

梨花は 母親譲りの 美しい娘になっていた。

艶のあるストレートな黒髪に 白い肌。 笑った顔は 母親にそっくりだった。

梨花は 大学に電車で通っていた。

寒い朝 両手を擦り合わせながら待っていると

「 あの〜…」

と 声をかけられた。

梨花は振り返ると どこか 微かな記憶に思い出される少し懐かしい顔が その人物に重なった。

「 もしかしたら 梨花ちゃんじゃない? 俺 覚えてる 幼稚園の時に 隣りに住んでた隼人だよ!」

「…ああっ! 隼人くん?」

梨花は 幼い頃の隼人と 同じ目元のスラリと背の高い青年が重なり、びっくりしながらも 嬉しくなった。

「 やっぱり!梨花ちゃんだ! 昔はよく遊んだよね!なんか遠目だったけど あっ!梨花ちゃんだとわかって 思い切って声かけたんだ!」

隼人は照れて 爽やかな笑顔を向ける。

「 そうだったんだ!よくわかったね! 隼人くん すごく背が伸びて かっこよくなってる! 別人みたい‼︎ 」

梨花も キャッキャと笑った。

隼人は 急に真剣な目になり マジマジと梨花を見つめると

「梨花ちゃんも 可愛い。 すごく美人になってる… なんか ドキドキするよ。 俺 幼稚園の時 好きだったからさ…」

「ええっ? 嘘だあーー!」 梨花は そう言いながら 隼人の腕をバチッと叩いた。

「 いってーなー!な! 今から ご飯食べに行かない?久々の再会を祝して!」

「 いいね! 行こうか!」

2人は 並んで歩き出した。

隼人は 熱い視線を 梨花に投げかける。

可愛い… 俺…ずっと 好きだった…

引っ越ししたけど ずっと 忘れられなかった…

ああ… ドキドキするよ…

今すぐにでも 抱きしめたい… キスしたい…

でも 今は我慢だ… 絶対に 絶対に 俺の彼女にする…

隼人もまた 父親と同じように 梨花に惹かれ すぐに虜になった。

あの頃のように 引っ越しでサヨナラにならないようにする。

隼人は 早くも 梨花の腰に手を回して 歩き出した。









end




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