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大野さんのバカ

第3章 3

Satoshi side

個展に合わせて出版した作品集
そこにリンの名前をアルファベットにして
入れ替えた名前が入っていた,と教えられて

そんな話知らないし,聞いたこともなくて

だから編集スタッフに確認の電話をしたのに

話が噛み合わない

苛立ちを抑えるために深呼吸をして

でも,和也の言う通り
アレは俺の作品集で
だからわかりません,じゃ済まされないし

この話を聞いてしまった以上俺も真実が知りたい

智「本人に…確認してもいい?」

もう方法はこれしか残されていない

一瞬瞳を揺らした和也は
静かに立ち上がって窓辺の椅子に座る

それを肯定と受け取って

携帯を発信画面に変えた

数コールで応答したリンは
これからどうしたらいい?と
好きだ,離れたくない,と訴えてくるけど

今はそれよりも真実が聞きたくて

その訴えを流して本題を問いかけた

ごめんなさい…と涙ながらに語られた真実を
どうしても許すことはできなくて

智「わかった
…もう連絡とるのもこれきりにしよう」

と伝えて通話を終了させた


智「…和也」

窓の外を見つめる和也に声をかけると

視線を動かして通話を終えたことを確認したのか

ゆっくり近づいてきて
さっきまでのように俺の隣に腰掛ける

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