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甘く、苦く

第81章 お山【Now I'm ready.】

大野side



恋人になって、

友達のときはできていて、
せっかく増えた会話もスキンシップも、
なくなってしまった。






仕事に打ち込む翔くんを
最初は応援していた。


『翔くん頑張ってるし、
声はかけない方がいいかな。』




─────ある日。


「しょ、翔くんっ、
すっごいいつも頑張ってるよね。
よくそんなに集中できるよね。

でも、無理はしないでね。」

「うん。…あ、」

「ん?」

「ごめん、今日これからまだ仕事だから、
先帰ってて。」

「えっ、いいよ、待ってるよ。」

「ダメ。この前もそう言って
帰るの遅くなって朝寝坊したでしょ?」

「うっ…」


ちょっとキツい口調で言われて、
何も言い返せなくなる。

────結局、俺は、
翔くんの言うことが全て“正しい”から
なんにも反論なんてできないんだ。


「でっ、でも…」

「ごめん、智くん。
今は一人で集中したい気分だから、
今日のところは帰ってよ。」



…なにそれ。

俺がいたら、邪魔ってこと…?


傍で応援していたいだけなのに。


翔くんは、

もう俺のことなんて見てないの……?


「ごめんね。我儘言って。
じゃあ、お仕事頑張って。」

「……うん。」


俺は俺で精一杯だったから、
翔くんの顔なんてみれてなかった。

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