甘く、苦く
第58章 末ズ【one step】
「ん……?」
目が覚めると、
そこはいつもの風景。
全部夢だったのかも…
なんて思った。
……でも、それが
夢ではないと悟った。
パンツしか履いていない
俺と和。
使い終わったゴム。
それに、散乱するティッシュ。
棚に置かれた潤滑油。
……ほんとなんだなって
思ったら、
急に恥ずかしくなって。
「…かず、」
愛しい人の頬を
優しく撫でた。
柔らかくて、
真っ白な肌。
もっと触っていたいけど
時間は限られているわけで。
「…起きろよ~」
目を擦り始めた和。
「なんだよぅ…」
なんて、小さな声まで
聞こえる。
思わず、笑みが溢れた。
愛しい人の寝顔と、
可愛らしい声。
いつもは大嫌いな朝も、
今、この時間だけ。
大好きになった。
…俺、ほんとに和が好きだ。
もうどうにもならないくらい。
自分でも歯止めが利かない。
「…んぅ、じゅん…く、」
ゆっくりと目が開き、
俺の方へ手が伸びる。
可愛いなぁ、なんて
思っていたら、
「潤くん、…抱っこ……」
って、弱々しい声がした。
…俺、最近で1番の
幸せを噛み締めている。
1歩だけ前進した。
これからどんどん、
二人で前に進もう。
ゆっくりゆっくり。
俺たちらしいぺースで。
ー終わりー