甘く、苦く
第59章 大宮【Gimmick】
「…智、俺のこと…
どう思って抱いたの…?」
えっ…
衝動で…
…セフレだから…?
いや、でも、
なんか違くて…
『ぁあっ、さとし…っ』
垂れ気味の眉が
いつもより垂れてて。
潤んだ瞳に、白い肌。
柔らかい手。
…可愛くて、
愛しくて。
……そうか、やっぱり…
俺はかなり前から
和に恋をしていたのか。
「…あのね、智、俺…
言わなくちゃいけないことが
あって…
…最初は、ほんとに…
純粋に、智が好きで…
ごめん。気持ち悪いよね。
ごめんね。
それで、たまたまエロ本
見っけたから…
智がそういうのに興味あるなら
俺でもいいかなって…
女なんかじゃなくて
俺となら…って。」
和は泣きそうになりながら
全部…全部話してくれた。
「それで、きっと智も
俺のこと好きだから…
なんて、自惚れちゃってて…
正直、智といるのが
楽しくて、幸せで…
最初はそれだけだったのに
あの本見ちゃったら、
俺じゃだめかなって…
女じゃないけど、
智のそばにいる方法が
それくらいしかなくて…
ごめん。俺すげえバカだよね。
ごめんなさい…
智の大切な初めてが
俺なんかでごめん…」
「和…あの、俺も―…」
「無理しなくていいから!」
「俺なんかのために、
ウソつかないでよ…
苦しくなるよ…
また、好きに
なっちゃうから…」
…恋って、
不思議なものだ。