あなたの色に染められて
第24章 Persuade
『はぁ?…5日前から?』
『そう。』
『…何で言わねぇんだよ』
『面倒くさいことになるから。』
俺の部屋で美紀の手料理を食べながら 璃子ちゃんの探りを入れてるときだった。
5日前にはもう日本に帰っていて 美紀の病院で先生のアシスタントをしてるとのこと。
それならそうとタイミングはいくらでもあったんじゃないかって。
『…頼むから会わせ…』
『ムリ。』
『……ませんよねぇ。』
はぁ…
こっちに戻ってくるのを知ってから 男連中が代わる代わる美紀を説得してるけど
“璃子が会いたくないって…”
その一点張りで。
自分で作った料理を自画自賛しながら普通に食べてるコイツって
『…ホント…』
『……なに?』
『…なんでもないです…』
手強い女。
それでもどうにかならないもんかと考えながら 二人揃って片付けをしてる時だった。
ピンポーン♪
洗い物の途中の俺は美紀に出るように頼んだ。
『は~い。』
手を拭きながら スリッパをパタパタと鳴らし玄関に向かった美紀は
『……直也。…お客さん…』
『……え』
『…こんばんは』
『……幸乃さん』
泡だらけな手をシンクに残し 振り向くとそこには長谷川さんと幸乃さんが立っていた。
『ごめんね。こんな時間に… 』
俺たちは二人の突然の訪問に驚いていた。
さっき片付いたローテーブルに美紀がお茶を並べて俺の横に座る。
『あのね……』
ケンタとちーちゃんを実家に預けてまでして俺の家を訪ねたこと
それはやっぱり
『…璃子ちゃんのことなの。』
美紀は俯いて小さく息を吐き 膝の上で両手をギュッと握ると 顔を上げて
『…はい。』
二人の顔をまっすぐに見た。
『……だいたい聞かなくてもわかります。実は…5日前にもう日本に戻って来てるんです。』
チラッと俺の顔を見て 少し驚いてる二人の目しっかりと見据えて
『私もまだ挨拶程度しかしてなくて…明日の仕事終わりに二人で会うんです……その時に説得するつもりでした。』
コイツはコイツなりに考えていたんだな。
俺は 膝の上で握りしめたままの美紀の手を包み込んだ。
美紀はハニカミながら俺の顔を見てから 幸乃さんの方へ向き直り
『…幸乃さん。…明日 同席してくれませんか?』
俺は美紀の手を覆うて手にさらに力を込めた。