あなたの色に染められて
第24章 Persuade
お店を出ると真っ正面に見覚えのある一台の車が横付けされる。
『早く!球場の電気が消えちゃうから。さぁ乗って乗って。』
窓の奥から直也さんが笑顔で手招きをしている。
私は挨拶もそこそこに幸乃さんと後部座席に乗り込んだ。
車窓から眺める街並みは ぼんやりと灯る電柱の灯りと車のライトが融合してキラキラと輝いている。
『もっとスピード出せないの?』
『…うるさい。少し黙ってろ。』
私たちのためにみんなが一生懸命動いてくれている。
逢うと決めてしまったけど…
どんな顔して逢えばいいの… なにを伝えたいの… そして…逢ってどうしたいの…
過ぎ行く光のなかに答えを探しても答えなんて見つからない。
……逢いたい
ただそれだけだもの。
繁華街を抜け 対向車線のすれ違うライトの数も疎らになったこの先に京介さんがいる。
…あっ。もうすぐ
いつも集まる居酒屋を通り越し 球場から一番近いコンビニの角を曲がると 煌々と光る何本ものナイターライトが目にはいる。
車一台 通れるぐらいにしか開いていない門を通り抜け バックネット裏の一番入り口に近い場所に車を停める。
私の目線の先には京介さんのミニバンが停まっている。
みんなが一斉に車を降りるけど私は動けなかった。
ガチャ
『……璃子ちゃん。』
幸乃さんがドアを開けて私に手を差し出す。
ふぅ…
目を閉じて小さく息を吐いて足を地面に着けて車を降りる
……バシッ
……バシッ
空と私の胸に響く ボールの捕球音。
幸乃さんは 押し進めるわけでもなく 落ち着かせてくれるように 私の背中に手を添えて私の顔を覗きこむ。
『…璃子ちゃん 行けそう?』
顔を上げると みんな笑顔で私を見ていた。
その笑顔に安堵して私は大きく頷き 足を一歩前に踏み出す。
球場の高い壁沿いをゆっくり歩いていくと キャッチボールの音の合間の笑い声がだんだん聞こえ出してきた。
『ちゃんと投げてくださいよー!』
『悪ぃ悪ぃ!』
『佑樹ー!走れー!』
グラウンドに通じる金網のドアノブに手をかけた直也さんが私の顔を見てニッコリ微笑むと同時に
…ガチャン
…ドキン
金網のドアと私の心臓がが大きな音をたてる。
幸乃さんと美紀は私の背中に手を添えて 私を開いたドアの真ん中に立たせた。