テキストサイズ

煩悩ラプソディ

第23章 年上彼氏の攻略法/AN






遊園地…?



「妹がバイト先でたくさん貰ったらしんだけどさぁ、あと二枚がどうしても捌けなくて」


目を上げると、窺うような視線を向ける翔ちゃんと目が合って。


「でさぁ…今度の日曜、一緒に行かね?」


ポリとこめかみを掻きながら伝えられた言葉に、浮かんだ疑問を素直に口にする。


「え…俺と、翔ちゃんで?」

「ふはっ、ちげーよ!
"俺ら"と"お前ら"とだって、」


『なんでお前と遊園地行くんだよ』と苦笑する翔ちゃんにつられてヘラッと笑いつつ、もう一度手元の紙に目線を落とした。



…そうだよね。


てことはつまり…


これって、もしかして…


"Wデート"ってやつ…!?



その新鮮な響きに、自分で呟いたにも関わらず急に恥ずかしくなって。


「予定大丈夫そうか?二宮先生にも聞いといてな。
詳細はまた連絡するからさ」


『いくら?』って言われて慌ててレジを弾いて、お釣りを渡しながら小さく口を開いた。


「…あの、ありがと、翔ちゃん」


多分、相当緩んだ顔をしてたんだろう。


俺を見ると手の甲で堪えるように口元を抑え、コーヒー缶を握って『じゃあな』と振りながら翔ちゃんは店を出て行った。


その後ろ姿を見送って、再び視線を手元に戻す。


少し皺の寄った紙を両手で引き伸ばしながら、高鳴る胸をそのままにじっとそれを眺めて。



にのちゃんと…
デートだなんて…


うわ…


超楽しみっ…!



緩みきった顔のままレジ対応しているのを、隣の店長から訝しげに見られても気にしない。


さっきまでにのちゃんのことでぐるぐる悩んでいた気持ちも、嘘のように晴れていて。


早くこのことをにのちゃんに伝えたくて、時計を気にしながら業務に精を出した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ