煩悩ラプソディ
第23章 年上彼氏の攻略法/AN
堪えるように唇を噛み締めた時、間延びした大ちゃんの声が頭上に降ってきた。
「…けどなぁ、今回はお前…相当やばいんじゃねぇか?」
そのセリフに似つかわしくないのんびりした声でそう言うと、はぁと溜息をひとつ零して続けた。
「…二宮先生な、お前に絶対会いたくないって言ってんぞ」
「…っ、え!?」
頬杖をついてじっと見つめられ、呆れたような顔でまた口を開く。
「"とにかく今は会えないから、相葉くんが来ても居ないって言ってください"って言われたよ」
「え…うそ、」
「嘘じゃねぇ。あのなぁ…いっつも理由聞かされねぇでただそんな事言われる俺の身にもなれっ!」
わざとらしく口を尖らせた大ちゃんが、眉根を寄せて愚痴ってくる。
…やっぱり。
許してくれるわけないよね。
"絶対会いたくない"なんて…
言われると思わなかった…。
翔ちゃんと居たさっきまでは、やばいと思いながらもきっと元通りになるだろうって心のどこかで信じ切っていた。
もしかしたら…
時間が解決してくれるんじゃないかって。
だけど、こんなにも直球で拒否されてしまうなんて。
ほんと俺…
取り返しのつかないことしちゃったんだ…!
今更ながらすとんと心に落ちてきて、一気に焦燥感に駆られた。
「大ちゃん!俺っ…どうしよ、」
「知るか!今回はなぁ、自業自得だ!」
「えっ、ちょ、大ちゃん!」
突き放すように告げられ、思わず立ち上がり丸椅子がガタっと倒れる。
「そんなこと言わないでよ!」
「あのなぁ、大ちゃん大ちゃんっていつまで俺に頼ってんだよ!」
勢いのままに言った俺に被せるように、大ちゃんも一際大きな声で返してきて。
「いつまでも何ガキみたいなこと言ってんだよ!
自分でやったことだろうが!ちゃんと責任取れっ!」
それは、今まで見たことないくらい真剣な顔で。
「…俺んとこ来る前にやることあんだろ。
ちっとは考えろ、バカ」
最後は静かに諭すように発した言葉が、胸にズキンと突き刺さる。
大ちゃんに、初めてに近いくらい真剣に怒られた。
いや…
怒ってくれたんだ。
「…忙しいからもう帰れ」
その場から動けない俺に後ろを向いてぽつり言ったその声は、いつもの優しいトーンでまた泣きそうになった。