煩悩ラプソディ
第29章 消費期限は本日中/AN
俺の手の中でイったにのちゃんの無防備な姿が脳内にリフレインしてて。
ごしごしと必死に俺の手を拭う今だって。
大きいパーカーが自身を半身隠して白い太腿がすらっと伸び、膝裏にスウェットを引っ掛けたまま膝立ちになってる。
気付いてないかもしれないけど…
それかなりエロいよ、にのちゃん。
ふぅと小さく溢して安堵の表情を浮かべたにのちゃんに、ベッドの上で居住まいを正してぐっと息を呑みこんだ。
「ねぇにのちゃん…あの、次はさ…」
窺うように見つめながら口を開くと、言わんとすることを察したのか少し緊張した表情になって。
にのちゃんと、ひとつになる準備…
先程ベッドの下に隠しておいた、円柱のボトルを手探りで取り出す。
こんなの、まともに使ったこともないけど…
けどこれは…
この先に進むには、絶対に必要なもの。
それをぎゅっと手に握って、にのちゃんを見た。
すると、驚いたように目を丸くしてボトルと俺の顔を交互に見る。
そうだよね…
こんなの持ってるなんて変…
「用意、してくれたの…?」
「…へ?」
「それ…」
ちらっと俺の手を見てから、またこちらに視線を戻す。
「ぁ…いや、その、これはっ…」
「良かった…」
「えっ?」
「忘れちゃって…それ、」
赤い顔で俯いたにのちゃんは、真っ白い太腿に手を置き正座で小さく肩を竦める。
「準備したからなんとかなるかなって思ったけど…
やっぱ不安で…」
語尾が小さくなりながらもその言葉は確実に俺の耳に届いた。
「準備…?」
「うん…相葉くんをね…
受け入れる、準備…したの」
ぎゅっと拳を握り顔を上げたにのちゃんは、眉が下がり潤んだ瞳で不安さを前面に出していて。
その言葉に、耳を疑った。
俺を受け入れる準備って…?
それってもしかして…
えっ、うそっ…!?
すかさずにのちゃんに擦り寄って正面で目を合わせる。
「ほ、ほんとにっ…?」
「……」
俺の問いに、瞳を揺らしながら無言で頷いて。
そんなにのちゃんを目の当たりにして、急激に愛おしさが込み上げてくる。
俺の為に…
にのちゃんが、そんなことまでっ…
堪らなくなって、小さくなっているその肩を引き寄せて掻き抱いた。