煩悩ラプソディ
第29章 消費期限は本日中/AN
少しの反発もなく滑り込んでいった指に驚きを隠せなくて。
そればかりか、柔らかささえ感じるにのちゃんの中では容易く指を動かせている。
初めての感覚に、言い知れない昂りが湧き上がってきた。
にのちゃん…
こんなに準備してたの…?
目下に視線を落とせば、緩く目を閉じて薄く開けた唇に両手を重ねたにのちゃんの姿。
頬から耳にかけてまで赤く火照ったその表情に、またどくんと熱が回ってくる。
ちゅぷちゅぷ…と水音を響かせながら指を動かしていくと、段々と入口に余裕が出てきて。
思い切って中指を添えてぐっと押し込んでみれば、ぴくんと体を揺らして小さく声が上がった。
「にのちゃん…?大丈夫…?」
「ぅん…平気だからっ…もっと、いいよ…」
潤んだ瞳で言われたその言葉に、否が応にも中心に熱が集中しだす。
滑りで枯れることのない中は熱くざわめいて、これからここに自分のものを入れることを思うと背筋がぞくぞくして。
「…ねぇ、ごめん…俺もう、限界かも…」
「んっ…ぁ、うん…」
すっかり抵抗なくスライドするまでになった指を、ゆっくりと引き抜き。
未だ身に纏っていたパーカーとスウェットを無造作に脱ぎ捨てた。
下着に手を掛けるとにのちゃんが目を覆うから、反り返って先走った自身に若干恥ずかしさを覚えつつも同じように脱ぎ捨てる。
すると、もぞもぞと上体を起こしてベッドサイドの棚から何かを取り出すにのちゃん。
「…はい、」
こちらに向き直りながら差し出されたそれは小さい四角の袋。
赤い顔で目を伏せたまま手渡され、受け取ってすぐに自身にそれを纏わせた。
「にのちゃんも…脱いでくれる?」
パーカーだけは着ていたにのちゃんに、窺うように投げかけると。
もそもそと首からパーカーを抜いて現れた真っ白な全身を改めて見て、思わず喉がごくりと鳴った。
「にのちゃん…」
向かい合っていた距離を詰めて、そっとその小さな体を抱き締める。
尋常じゃないくらいの鼓動がどくどくと響き、触れ合う柔らかな素肌の感触が更に拍車をかけて。
これから…
にのちゃんと、ひとつに…
ゆっくり体を離し、可愛らしい薄い唇にちゅ…っと触れるだけのキスを落とした。