テキストサイズ

例えばこんな日常

第4章 雪の帰り道 (by嵐板spin-off)/AN




赤色灯を旋回させながら通行人を誘導する。
こんな雪の日にバイトだなんて、ついてない。


ふぅと吐いた息は、暗闇に白く煙って消えていく。


鼻をスンと啜って、ネックウォーマーに深く口元を埋めた。


ふいに、ヘルメットにこつんと軽い衝撃。
顔を上げると、缶コーヒーが目の前にあって。


後ろを振り向くと、少し高い位置にある笑顔を捉えた。


「お疲れ、にの」

「え、相葉くん…」


ニット帽と暖かそうなマフラーで完全防寒したその同級生。


「ふふ、鼻赤いよ」

「…だってさみぃもん」

「耳も赤い」

「もう触んなっ」

「ね、まだ終わんないの?」


ふふっと笑って、隣に並んで問いかけられる。


「あと…30分かな」

「…そっか」


ちらっと見上げれば、真っ直ぐ前を見たままの横顔。


ふらふらと誘導棒を振っていると小さい声が降ってきた。


「…待ってていい?」

「…え?」


ヘルメットをずらして目を上げると、こちらを一瞬見て。


「話したいこと、あるから…」


逸らした目は、泳いでいた。


「…顔、赤いよ?」

「ぁ…う、うるせっ!」


…それ、わかってるから。
俺もね、話したいことあるんだ…相葉くん。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ