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例えばこんな日常

第23章 absolute obedience/OM






荒い息遣いの合間、互いの唾液が絡まる音が耳に纏わりついて。


そしてうわ言のように繰り返される俺の名前。


「はぁっ、おおのさっ、」

「んっ、はぁっ…」



だからそんなのいいっつってんだろ。


名前なんか呼ぶんじゃねぇ。


これ以上お前の本気見せられたら…


遊びじゃなくなんだろうが。



ふいに、荒々しかったキスが止んでぴたっと動きが止まった気配がした。


俺の考えていたことを読んだように急に大人しくなった松潤。


様子を窺おうと、首に回していた腕をそっと緩めてゆっくり目を開ける。


すると、覆い被さった至近距離の松潤の顔がそこにあって。



っ…!



その射抜くような瞳に思わず息が詰まった。


さっきの忠犬みたいなそれとは全く正反対の、まるで雄ライオンみたいな鋭い瞳。


加えて鼻先で感じる熱い吐息に意識が持っていかれそうになる。


そう思った時にはもう遅かった。


コイツの艶を帯びた赤い唇が微かに開いて。


その口から発しようとした言葉をまた塞ぎ込んでやろうとしたのに。



「好きです…大野さん…」

「っ…」


雄々しい瞳で真っ直ぐ突き刺さった言葉。


そしてスローモーションみたいに瞼が閉じられて、ゆっくりと下りてきた柔らかい唇。


さっきの荒々しさとはかけ離れた優しいそれに、全身にどくどくと熱が駆け巡った。



あーあ…
もう何もかも手遅れじゃねぇか。


どうしてくれんだよ。


お前は俺のおもちゃのはずなのに。


全部お前のせいだかんな。


俺を…


この俺の心を揺さぶりやがって。



そっと離された唇が長いキスの終わりを告げる。


瞼を開ければ、ほぼ同時に開かれた綺麗な瞳と視線が絡まり。


「…初めてだ、お前が」

「…え」

「俺を本気にさせやがって…」

「っ、え?」

「百万年早ぇんだよバカ」


言いながら体を起こそうとすると慌てて飛び退くコイツ。


さっきの色気なんか微塵も無くなって、いつもの狼狽えた表情に様変わり。


「おい行くぞ」

「え、どこに…」

「どこって…俺んちに決まってんだろ」

「えぇっ!?」



つくづくおもしれぇヤツ。


だけど気に入った。


お前がそこまで言うんだったら…


俺の本気も見してやるから覚悟しとけ。






end

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