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秘密中毒

第3章 慰め



メールは卓也さんからだった。


『来週木曜日に時間取れるから会おう

いつものところで』



トイレの個室でメールを確認したあたしは、

その日の休暇を取った。

………

………………


卓也さんは半年前まであたしの会社の得意先に勤めていた。

その得意先が倒産したと聞いた日。

いつもみんなより早く退社するあたしを会社近くで待っていた卓也さんが、あたしをお茶に誘った。

あの人が帰って来るまでの時間はたっぷりあるし、卓也さんとは言葉を交わしたこともあったから…

軽い気持ちでお茶を飲んだ。

ううん、その時にはもうわかっていたんだ。
彼があたしを口説くつもりだってことを。


騒がしいファミレスの片隅で、初めて卓也さんをまじまじと見た。

黒い短髪に、髭も眼鏡もないつるんとした印象の顔。

好きでも嫌いでもないその人。
だけど照れを含んだ本気の視線で見つめられて、あたしの心臓が早鐘を打った。

「もう会えないと思ったら、ダメもとで誘わずにいられなかったんだ」と妻子あるくせに悪びれずに言う。

あたしは高揚していた。

冗談めかして声をかける人はいたけれど、

本気であたしを欲しがる男の存在を、結婚して以来初めて知って

素直に驚き、嬉しかった。


抱いてくれないあの人に、女のプライドを引き裂かれていたから…

喜びはそのぶん上乗せされて。


次に会った時、あたしは卓也さんに抱かれたのだった。




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