秘密中毒
第6章 発覚
「アヤさ~~~ん!どこ行ってたのぉ?もう事務長に花束も渡しちゃったよ~」
座敷に戻ると、宴会は終わろうとしていた。
「すんません、僕が悪酔いしてるとこ、介抱してくれたんす」
少し離れたところで、何してたか聞かれて葛西くんが答えている。
事務長に別れの挨拶をすると、「後は桜ちゃんとアヤちゃんに任せるぞ!」と肩を叩かれた。
あたしは笑顔を作りながら、思っていた。
この会社にいられないかも知れないのに――――
秘密を知られて、隠すためにまた別の秘密を作る。
どこかの刑事ドラマの犯罪者みたいじゃない、あたし。
これ以上葛西くんに何か求められたら………辞めよう。
何もなくても、だめかも知れない。
…………
……………………
2次会の誘いを断って家に帰った。
帰り道の記憶はほとんどない。
ただ、さっきの感触――指に絡まる唾液、鼻腔に立ちこめる匂い――がよみがえるたびに。
口内に残る違和感とかすかな苦みを覚えるたびに。
トゲはまた大きくなって、あたしの胸の中心を刺した。
その痛みは徐々に一ヶ所に集まって
喉の奥に何か大きい塊がつかえてるみたいだ――――――
(なんで…………?)
好みの男と刺激的な体験しただけだよ。
あたしは不倫するような女だから
葛西くんだって、すぐああいうことできるって思ったんだよね。
あの人がしてくれないから、他でするんでしょ?
それで良かったはずだよね?
…………
あたしはなぜか必死で。
自分に言い聞かせてた。