秘密中毒
第8章 恋慕
山田くんの作ってくれたおじやは、びっくりするほど美味しかった。
鶏のササミと根菜のスープまである。こっちも絶品だ。
感動で頬が緩む。
「なにこれ?美味しすぎる~」
「そうだろ。食い過ぎて吐くなよ」
「そんなもったいないことしないよ」
山田くんがまたあたしから見て90度の場所に座り同じものを食べ始めた。
これって2人で食事してる……ってことになるよね?
あたしは照れ隠しもあって口を開いた。
「こんなにしてくれて…彼女に怒られそうだね」
「別に。そんなのはいない」
「そう…なんだ。モテそうなのにね」
意外に思いながらそう言うと、ちょっとあたしを見た山田くんが答えた。
「モテないとはいってねえ。あとくされなさそうな女なら遊ばせてもらう程度。」
「遊ばせ……って」
「なに、詳しく聞きたいか?」
「いえ!結構です!」
あたしが慌てると、くくく、と喉の奥で笑う。
口いっぱいのおじやを頬ばっても下品に見えない顔。
ときどき上下に動くのどの出っぱりと、しなやかな筋肉がわかる首すじ。
すぐそばにいるこの人に、匂い立つような男の色気を感じる。
(それってあたしだけじゃないよね…そりゃそうだ)
スプーンを運んでたきれいな手がふと止まって。
「おまえさ」
低い声が背骨をくすぐる。
「俺に抱かれたいって目が言ってるぞ」
…………
「はあっっ????」
うん、今、たぶん見とれてたけれど。
「そんなこと思ってるわけないでしょ!」
抱かれたいとかはない。
たぶん、きっと。
…………
「っていやいや絶対思ってないから!!!!」
そこで山田くんが震えだした。
「わかった!わかったから、落ち着け…っ」
笑ってるし。
もう…疲れる。
なんであたし、こんなにムキになってるんだろ。
会社でも家でも、ムキになんてならずにやってきたのに。
セクハラだってさりげなく受け流せる。
あたし自分ではずいぶん大人になったつもりだったのに………
ほんと、調子狂っちゃう。
…………
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