秘密中毒
第8章 恋慕
「お、お礼ね?もちろんするする!」
お菓子とかおしゃれな小物とか?
「何がいいか俺が決めるから。間違っても菓子折りなんか、よこすなよ」
「あ………はい。」
お菓子とかじゃダメなのか…
「濡れた服、すぐに着替えろよな」
そう言うと、山田くんはあたしから離れてカバンを持ち、玄関に向かった。
「…あの、いろいろありがとう…」
山田くんが靴を履いて振り向く。
「今日も寝とけよ。」
「はい」
「………」
「………」
「…そんな顔すんな」
「えっ?」
「ブサイク」
「はぃっ?」
『バタン』
…行っちゃった。
最後の最後に「ブサイク」ってどんな挨拶なのよ!?
「………はぁ~~~っ」
着替えるついでにシャワーを浴びようと脱衣所に向かう。
あたしの身体、ふわふわと頼りない。
熱の後の気だるさだけじゃない気がする。
山田くんが触れた胸元、肩、おでこ、背中、腰、――――くちびる。
昨日とは違ってしまった。
全部何かの間違いみたいな、全部あたしが望んでたことのような………
こういうのを、夢みたいっていうのかな。熱を出してた間だけの夢…
(洗うのもったいないな…)
シャワーのレバーをひねりながら
10年前の別れの日、山田くんと握手した後と同じことを、あたしは思った。
…………
……………………