秘密中毒
第9章 お礼
シャワーを浴び終えて、さっきとは別の部屋着を着てから
携帯に着信があるのに気付いた。
「知らない番号だ…」
その瞬間あたしの頭の中に、たった一つの名前が浮かんでいた。
この間、予診票に携帯番号を書いたし。
あたしの番号、知ってるはずだ。
(山田くん…)
さっき帰ったばかりなのに、何か思い出したんだろうか?
「か、かけなおしたほうがいいよね!」
あたしはひとりで確認して、
それから水を飲み、ソファーに腰掛けて深呼吸をした。
「……ふぅーー。ってなに緊張してんのあたし?」
その瞬間、手の中の携帯が鳴った。
「わっ!かかってきた!」
さっきと同じ番号からだ。
ひと呼吸置いて、通話ボタンを押す。
「あ、水谷さん?よかったああ~出てくれて!!」
「…!」
あたしの耳に、柔らかい低音は聞こえてこなかった。
「葛西くん………?」
金曜の夜のことがリアルによみがえる。
電話に出る瞬間まで高鳴っていた心臓が
急に冷たくなったような気がした。
…………
…………