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素晴らしき世界

第21章 嫌いの向こう側

「手…どけて?」

俺の声にオドオドしつつも
クロスした手を顔から離した。

「俺の顔、見える?」

身体を密着させ、至近距離で言うと
琥珀色をした潤った瞳が俺を捉えた。

顔を紅く染めた和。


相当、恥ずかしかったんだろうな……


でも、和が体勢を自分で変えたから
言わなくても俺の顔、見れたんだよ?


いつもなら冷静沈着で、
すぐに周りの状況を把握し
どんなことでもサラリとこなす和。


俺も今日は和が可愛くて余裕が無かったけど
和もそうだったの?


いつもと違う俺に触発された?


自惚れてもいい?


これって俺だけが見れる和だよね?


「濃い顔……」

さっきまで可愛かった和はどこへ行った?

和がニヤリと笑う。

「随分、余裕だな?」

俺もニヤリと笑い返した。

「俺はいつでも余裕だよ?」


コイツ……絶対に啼かしてやる。


お預けを食らっていた俺のモノを
和の蕾に再び浅く入れて腰を動かす。

「あっ…んっ、いや…っ」

「嫌なら、止めるよ?」

ピタッと腰の動きを止めると、
やっぱり可愛く俺を睨んだ。

「動いてほしかったら、
俺の質問に答えてくれる?」

「質問による」

ムスッとした声で答えた。


俺が和の傍にいる理由、覚えてる?


あれから多くの年月を和と共に過ごした。

『ゴメン』の代わりに、
たくさんの愛情を和に注いだ。

和につけた心の傷は癒すことは出来た?

昔のことを思い出して、
どうしても和の答えが聞きたくなった。


「俺のこと……許してくれた?」


一瞬、驚いた顔をしたけど
すぐに笑顔に変わった。

そしてゆっくりと
俺の首に手を回したと思ったら

「うわっ!」

もの凄い力でグッと俺を引き寄せた。

反射的に閉じた目を開けると、
和が俺を睨んでいた。

「許してないから」

低い声が静かな寝室に響く。

「これからも許さない」

睨んでいるのに目に涙が溜まっていく。

「だから……ずっと傍にいて」


俺の答えは決まってる。


「和が望むなら、傍にいる」


ありがとう……


「勝手にしろっ」

「言われなくても、勝手にします」


ずっと傍を離れないから、
和もずっと俺を許さないでね?


【end】

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