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オムツン

第28章 二十八枚目

カズ君は、店の仕事があるから、と言って本当に私一人に任せて行ってしまった。

仕方がないので、私はとりあえず、マリと話をしてみることにした。

「どうして風俗で働こうと思ったの?」

「いえ…その…」

言いづらいのか、マリは言葉を濁している。

「お金…ではなさそうだね」

「…はい」

私はマリの服装や持っているショルダーバッグがそこそこに高価な物であることがわかった。

もし、クレジットカードを使い込んで借金でもするなら、もっと派手で、高級で悪趣味な服装やブランド品を身につけているだろう。

それに彼女の顔は借金に追われ、追い詰められている顔ではなかった。

どちらかと言えば…希望…期待…興味…といった陽の感情を覗かせる。

「家族は?」

「夫と、小学生の子どもが二人います。もちろん夫は私がこちらで働くことは知りません」

「ふぅん…旦那さんの仕事は?」

「会社の役員をしています…ほとんど家には帰ってきません」

「旦那さんにバレたら困る?」

私は自分と妻のことを被らせて、ついいらぬ質問をした。

「…はい、それは困ります」

「お金が必要でもない、バレたら困るリスクもある…それでも働きたいんだね?なぜ?」

マリがカウンターの上の一点を見詰めている。

そこには木目以外に何もない。

答えは書いていない。

彼女の考えるときのクセなのかもしれない。



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