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カクテルパーティー

第5章 言葉はもつれ始めて

並んだ席から発せられる会話の中を縫うように僕は進んでいく



「ラザロ徴候って見たことある?」

「見るもんじゃないよ
見たら腰抜かすから」

「よその病院では急に上半身がムクッて起き上がって叫んだんだって」

「もうホラーだね」

「いやそれ絶対ウソでしょう」

「味噌汁にカボチャってあうよね」

「おいしいよね〜」

「あたしゃタマネギだね」

「子供が風邪で寝込んでるってのに窓開けっ放しにしてさ」

「あんまり処置が遅いんで頭はたいてやろうかと思ったわ」

「男の子が泣きながら騒ぎ出してさ、処置が痛かったから先生も痛みを受けろみたいなこと言い出しちゃってー」

「あんなの困るよね」

「お母さんも叱ってたんだけど男の子ずっと睨んでんのね」

「ホントかんべん」

「…くん、まだ来てないね」

「…ほら
言ってたらおいでなすったよ」

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