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昔と今は。

第2章 始まり(1)



「っ!!?」
いつもの夢に飛び起きる。
またあの夢、だった。
俺がまだ幼い頃の記憶…だったはずだ。実を言うと、その頃の記憶をよく覚えている訳ではない。
いや、正確には”その記憶だけすっぽりと抜け落ちている”のだ。

だが夢に出てきている少女には見覚えがあった。どこか、遠い昔に見たような既視感。それがなぜかあった。

そして、記憶がないというのに俺の記憶だ、そう確信できるのには理由があった。

確かこの夢に苛まれるようになった時の、一番最初に見た夢。
仲良く自己紹介、とまではいかないが、確か俺がまだ少女に名乗っている場面があったから。
そこで言っている名は間違いなく俺のものだった。
夜霧野なんてそういる苗字じゃないから。

だが、肝心の少女の名前だけが霞んでいるように思い出せなかった。

「取り敢えず着替えっか…」
今日の天気は、夕方から土砂降り。毎日作り笑顔を振舞っている天気予報士の偏見だと都市中心部ではかなり記録的な大雨らしい。
もしかしたら道路が冠水する恐れもある、と。

そうじゃないといいが、とか思いながら朝食のパンを齧った。

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