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Face or Body

第14章 ある医師の悲劇

海浜整形クリニックの医師
鎌田俊男42歳は
心のそこから
絶望感を滲ませながら
小刻みに震え立ち尽くしていた。

ここは
とあるラブホテルの一室。

目の前には
愛人である
鈴村タマキの死体が転がっている。
首を絞めてタマキを殺した
手の感触がいまもリアルに残っている。

出来心だった…。

鎌田は海浜整形クリニックの院長
遠山雄大の娘婿である。
近い将来の院長の座が約束されていた。

しかし妻であるカナとの
夫婦関係は崩壊していて
家庭は寒い風が吹いていた。

出来心だった…。

そんな折
鎌田は出入りの製薬会社の
若い営業レディ鶴田タマキと
不倫関係となっていた。

出来心だった…。

そんなタマキから
妊娠を告げられ
多額の慰謝料を要求された。
『婿養子の俺にそんな金額は出せない…』
その返答に
タマキは不倫関係を
鎌田の妻カナに
すべてを伝えると彼をなじった。

出来心だった…。

どうすればいい―――………?
誰か助けてくれ……っ!!

そのとき
なぜか鎌田の脳裏に
同じ趣味の仲間として
親しくなった
町の篤志家としての一面を持つ
横浜海浜組を経営する人物の
暖かな顔が浮かんだ。

鎌田は彼に
自首をしたいから付き添ってほしいと
懇願しようと決意していた。

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