
泣かぬ鼠が身を焦がす
第2章 チーズの夢
カチャ、と扉の開く音で目が覚めた
薄く目を開くとそこにいたのは
あ、最初にお目にかかったメガネのイケメン……
「お目覚めですか。おはようございます」
「……お、はよございましゅ……」
込み上がってくる欠伸を全力でしながら返事をすると、それをじっと見られる
人が欠伸してんの見て楽しい?
って、待ってんのか
身体を起こして話を聞く体勢を作ると、その人はまず自分の自己紹介からしてくれた
「改めまして私、伊藤静と申します。我が杉田コーポレーションの社長であります杉田拓真様の第一秘書を務めております」
んん?
このイケメンがイトウシズカさん
社長さんがスギタタクマさん
へぇ……杉田コーポレーション……?
「え!?!?ここ、杉田コーポレーション!?」
「はい?」
「そんな大企業にいるの!?」
「弊社のことをご存知でいらっしゃいましたか」
ご存知で、って……
「知らないわけないよね!?世界トップシェアのIT企業じゃん!!!」
「ありがとうございます」
落ち着いた様子の伊藤さんに反して、俺は全然落ち着けない
杉田拓真……聞いたことあるかも
雑誌で見たんだ、多分
すごい……
