
泣かぬ鼠が身を焦がす
第12章 盲目
「……っ」
俺が息を詰めてまた涙を流すと、藤本は苦虫を噛み潰したような顔をした
「なんだそれ。…………つっまんねぇ」
「つまらない?」
「?」
ぽつり、と呟かれた声に俺も杉田さんも疑問符を飛ばす
そして藤本は杉田さんを睨みつけた
「こんなドブ鼠が好きなんて、あんたも随分趣味が悪いんだね?」
「なに?」
「路地裏で汚なく転がって、残飯でも食ってるのがお似合いだったのにさぁ。そんでたまに構って綺麗にしてやると馬鹿みたいに喜んで」
はははっ、と藤本が笑い声をあげて愉快そうにしている反面、杉田さんの顔はどんどん曇っていく
「おい、いい加減にーーー」
「あーもーいいよいいよ。飽きちゃった。そういうマジになんのとか、かっこ悪いわ。返してやるよ」
「!」
なんか、意外とあっさりしてる……?
何考えてんだこいつ
杉田さんも同じ考えのようで、首を傾げている
しかし藤本は本当に俺に興味がなくなったらしくて部屋の出口に向かって歩き始めた
なんだ、あいつ?
本当に
何がしたかったんだ
藤本とすれ違うように俺の方へ向かう杉田さん
そしてそのことにほっとした直後、藤本は振り返ってこう言った
