
泣かぬ鼠が身を焦がす
第26章 嘘八百
ここにいるってバレてしまうのがなんとなく気まずくて、人の話し声が聞こえなくなるまで浴室でじっとしていた
普段は浴槽に浸かったりするの好きだからゆっくり入るけど、今日は身体をぱぱっと洗っただけでお風呂から出る
部屋に戻ろうとすると、廊下に女の人が立っていた
「?」
誰だろう
お手伝いさん?
俺が近づくと、その人が俺の方を見る
なんか、焦ってる?
「あぁ……良かった」
「え…………なんかありました……?」
「早くお部屋に戻られて下さい!」
「えっ、ちょ……なに」
お手伝いさんは俺を見つけると話もまともにせずに背中を押して部屋に押し込む
そして俺が部屋に入ると、後ろからガチャンという金属音が聞こえてきた
「えっ……なに、なんで」
「大臣からの言いつけで、部屋には鍵をかけるようにと言われております。では、私はこれで」
「は? 何で!?」
ちょっと待ってよ!!
部屋を開けようとしたけど結構頑丈な鍵がかかっているらしくて、ドアはびくともしない
しかもドアの前にいた女の人の足音がどんどん遠ざかっていってしまった
まじかよ
あそこで待ってたってことは、風呂も入らせる気なかったってこと……?
