
泣かぬ鼠が身を焦がす
第27章 苦あれば
訝しげな顔をした俺に、お手伝いさんは少しうつむき気味になって言った
「私は……数日間純様のお世話をさせて頂いて、純様が悪い人じゃないと……いえ、むしろ、とっても良い方だって知ってます」
俺が良い人?
そんなことあるわけない
「だから、あの人達が純様を苦しめているなら……っ」
膝の上で握りしめていた手の上に、雫が3滴落ちた
泣いてる……?
俺は自分の心臓がぎゅぅ、と縮まる音を聞いた
「あなたは、ここを出るべきです……!!!」
久しぶりに人の本当の優しさに触れて、苦しい
最近の俺は本当に汚くて、どうしようもなかったから
眩しくて仕方がない
心が洗われる気分ってこんなか、と思わず俺も泣き出しそうになってしまった
俺が感動から放心してしまっていると、俯いていたお手伝いさんが顔を上げた
「だから私が純様が逃げるための時間を稼ぎます……!!」
「は?」
「私が、純様がちゃんと部屋にいるかのように振る舞って、大臣がお帰りになるまで絶対に悟られないようにしてみせます」
決意を固めた顔をしたお手伝いさん
いや、俺は有難いけど
「そんなことしたら、本当にどうなるかわかんないよ!?」
