
泣かぬ鼠が身を焦がす
第27章 苦あれば
夜通し歩いて
そもそも疲労でいっぱいだった俺の身体はもう限界だった
でも、ここまで来た……
しかしその甲斐あって、既に俺は拓真さんの自宅がある場所の近くまで来ていた
マンションのてっぺんが少しだけ見える
やった
まだ高級住宅街の無駄に巨大な民家に邪魔されて見えたり見えなかったりはするが、拓真さんの住んでいるマンションが見え隠れしてる
「……っわ、ぶね……」
でもそんなことに浮かれていたら、膝がガクンと折れて崩れ落ちてしまった
膝ほんとやばい
がっくがく
それに手も
地面についても力入らないから立ち上がれない
やば
生まれたての子鹿みたいに手足ぷるぷるさせながら、長い時間をかけて立ち上がる
こんなとこで倒れてたら万が一にも拓真さんに会えない
あと少し
もう見えてんだから、歩かなきゃ
引き摺るように出した足には、もう靴下なんてあってないようなもの
裂けて、破けて、ズタボロになっているせいで、コンクリートは直に肌へと刺さってくる
幸運だったのはもう意識も朦朧としていて痛覚が薄れてたこと
痛くも痒くもない
ただただしんどい
それだけ
まぁ、それが何よりも辛いんだけど
