
泣かぬ鼠が身を焦がす
第27章 苦あれば
男の人の声
拓真さんかな
ちゃんと聞いてみれば、その声は全然知らない人の声で
「大丈夫ですか?」
俺の安否を確認するもの
「……いじょぶ、です……」
こんなズタボロで
高級住宅街に間違えて迷い込んだホームレスみたいな奴によく話しかけるよな
お金がある人は心にも余裕があるっていうのは本当なのかもしれない
つまり今の俺にはお金も大してないから、心の余裕はない
「救急車呼びましょうか?」
「いい」
ごめんなさい
でも俺、これ以上何か喋ったら今度は胃液でも吐きそうなんだもん
俺が立ち上がろうとすると、男の人は支えてくれるでもなく1歩引いた
あー
汚いし、触りたくないよね
わかるけど、ちょっと傷つい……た……?
見せかけだけの優しさを感じて、少しだけ心が痛む
でも本来そんなことに気を取られている暇じゃない俺は、そのせいで立つという行為に集中しきれていなくて
やば
また身体が傾いでいくのを感じた
倒れる
全然、手着く余裕もない
俺の身体はなんの抵抗も出来ずにコンクリートの地面に叩きつけ
「ーーー!!!!」
られると思ったが、直前で何かにふわりと抱き寄せられた
