
泣かぬ鼠が身を焦がす
第28章 画竜点睛
俺達2人が落ち着くと、俺はまたベッドに戻された
まだまだ絶対安静だろう、って
身体を気遣ってもらえる事すら嬉しい
なんて俺は結構重症だな
そして俺をベッドに寝かして布団を掛けた拓真さんは、俯き加減に言った
「言い訳をさせてくれないか」
言い訳?
俺が戸惑いつつ頷くと、拓真さんは部屋に置いてあった椅子を持ってきてベッドの隣に置いて座った
そして語り出したのは拓真さんがあの日、どうして俺を母さんに受け渡したのかっていう理由だった
確かに俺も知りたかったこと
だけど
少しだけ、聞くのが怖い
「……俺はあの日、当然純の母親に純を渡すつもりはなかった。だが……」
拓真さんは当時のことを思い出すみたいに目を伏せる
「だが……実際に母親と対峙して、あんな風に言われたら……どうしても……母親と一緒に暮らせた方が幸せななんじゃないか、という気持ちにさせられたんだ」
母親と一緒に……
普通はそう思うのかな
俺にとっては遥か昔になくなった感覚
でも、そっか
俺のこと考えててくれたのか
真実を知ることは怖いと思ってたけど
拓真さんはやっぱり優しい人だった
……少しだけ、思い違いがあったみたいだけど
