
泣かぬ鼠が身を焦がす
第28章 画竜点睛
「こっち」
もっと俺の方に来て
ちゃんと手が届く距離まで
拓真さんが何やらわからない顔をしながら俺の言う通りに従うと、俺は拓真さんの腕の中に飛び込んだ
「……」
俺のこの奇行にも拓真さんはちゃんと対応してくれて、柔らかく抱きしめてくれる
安心する
「……ねぇ拓真さん」
「なんだ?」
拓真さん
俺はさ
「俺、拓真さんの傍に居られるだけで幸せだよ」
血の繋がりなんて関係ない
親とかそんなの、俺には別にいらない
「それに……それにね……」
俺は自分の声が涙で潤むのを必死で堪えた
きっとそれはバレバレだっただろうけど、拓真さんは見て見ないフリしてくれる
1度深呼吸をして息を整えた俺は、改めて拓真さんの背中に手を回した
「俺は……例え不幸でも、拓真さんの傍にいたいんだよ」
「!」
拓真さんの背中がピク、と震える
それがどういう意味なのかわからないけど、今の俺は自分の気持ちを伝えるので精一杯
「だから、ずっと離さないで……傍に、置いて……っ」
俺が言い終わると同時ぐらいに、拓真さんの俺を抱き締める腕に力が入った
少し苦しいぐらいだけど、目が覚めた時と同じで安心する
