
泣かぬ鼠が身を焦がす
第29章 黒白を
ちょっとだけ、怖い
お手伝いさんは大丈夫かな
怖い思いしてたら嫌だな
あの人にバレた後、どんな行動を取られるかわからない
それが今日来るか、明日来るか
それすらわからないことがもどかしい
俺がソファの上で体育座りするみたいに丸くなっていると、拓真さんが何故か俺の隣に腰を下ろした
「?」
仕事してたんじゃないの?
戻らないの?
そう思って顔を拓真さんの方に向けると、拓真さんは俺に手を伸ばしてきていた
「??」
俺は意味がわからないまま固まる
拓真さんは俺の両脇に手を入れて持ち上げて、俺を自分の膝の上に導いた
向き合うように座らされた俺を、拓真さんは優しくその腕で包む
「たく、まさ……?」
そして引き寄せた俺の頭の後ろを拓真さんは大きな手でぽんぽんと軽く叩いた
「大丈夫だから、俺に任せろ」
「!」
俺が不安がってるってわかったのかな
……いや、結構顔に出てたのかもしんないけど
それでも嬉しい
俺は温かい何かがじわ、と心に広がるのを感じた
あ、そうだ
今のうちに言っておいた方がいいよね
お手伝いさんのこと
でもそれには、俺が家にいた時のことを話さなきゃいけない
