
泣かぬ鼠が身を焦がす
第29章 黒白を
そして次の日
つまりは、あの人が視察から戻ってきてから1日経った日
これまで数日間鳴らなかった家の電話が突然鳴り響いた
なんで今日まで鳴らなかったのかって言うと、拓真さんが仕事の連絡を全てメールに徹底してたからだって後から聞いた
それなのにその日電話が鳴ったってことは、それが緊急の連絡だってこと
その時リビングで俺と食事をしてた拓真さんはさっと立ち上がり電話に出た
「はいーーーあぁ、それで?ーーーそうか」
電話の相手の声が聞こえるわけじゃないから、俺には拓真さんがうつ相槌しか聞くことが出来ない
拓真さんの話し方には特に感情は篭っていないから、そこから何かを察するというのもむずかしくて
なんだろ
俺のことかな
俺は1人テーブルでモヤモヤした気持ちを抱えていた
「わかったーーーあぁ、後で」
暫くして拓真さんの電話が終わると、俺は声を掛けるでもなく拓真さんを見つめる
その視線に気がついた拓真さんが、さっきまで座ってた俺の向かいの席じゃなくて俺の隣の席に座った
「拓真さん……今の電話ってさ……」
「隠していいものではないから、話す。今の電話は、想像通り純の両親と関係するものだ」
「……」
