
泣かぬ鼠が身を焦がす
第29章 黒白を
裁判の連絡のついでに、記事の下書きのコピーを封筒に入れて相手に渡してもらう
これは完全に脅しだ
だが、それでいい
どんな手を使っても俺は純を渡さない
俺は電話を終えて、ため息を吐きながら椅子の背もたれに身体を預けた
それも一瞬で終わらせ、俺は立ち上がる
そして俺は仕事をすると言って篭っていた書斎から寝室へと移動した
そこではベッドの上で純が寝息を立てている
俺は純が眠る横に腰かけて、黒い髪を指で梳いた
純は俺がこんなにも人を傷つけるために動いてる人間だと知ったら軽蔑するだろうか
自分のためにしなくていい、と言うだろうか
それが怖いから、俺はきっとこのことを隠して
墓場まで持っていくだろう
俺の汚い部分を見て欲しくない
俺は純の全てを知りたいと望むのに、勝手なものだ
髪を触るだけでは足りず、俺は純の頬を、唇を、指でなぞるように触っていく
「……んー……」
擽ったかったのか、眉をひそめた純が身じろぎした
その姿が動物のようで、俺の口元が緩んだのがわかる
裁判はすぐそこに迫ってる
純にそのことを告げなければいけない
そのことがまず最初の難関だな
