
泣かぬ鼠が身を焦がす
第6章 病に薬なし
あー、ほら
やっぱりデコ熱い
ケホ、と小さく咳をした杉田さんに「動くべからず」と呪文(という名の命令)をかけて俺はバスルームに向かった
小さめのタオルを水で濡らしてから部屋に戻り、杉田さんの額に置く
でもこれじゃあなぁ
薬とか、氷枕とか欲しい
そう思ってると、俺の意思が通じたかのように扉が開いて伊藤さんが入ってきた
お、ナイスタイミング!
「おはよー伊藤さん!」
「おはようございます。?」
いつになく元気に挨拶をした俺に、訝しげな表情の伊藤さん
いやでも今はそんなの気にしてる場合じゃないのよ
「杉田さんが風邪ひいちゃったからさ、薬と氷枕持ってきてくれない?」
「はい?社長が、風邪……?」
俺越しに杉田さんを見た伊藤さんと一緒に俺も振り返って見ると、杉田さんが身体を起こそうとしていた
「いや、仕事に……っ」
こらこらこら
何してんの!
ベッドに戻れチョップ!!!
「せいっ」
「って……」
頭を押さえて俺を見上げた杉田さんをそのまままたベッドに倒す
伊藤さんも遅れてベッドの横までやってきた
「顔色が悪いですね。やはり本日のご予定はキャンセル致しましょう」
