
泣かぬ鼠が身を焦がす
第8章 網の目にさえ
単語に慣れって……と笑う茜さんに今度こそ拗ねて俺は顔を背ける
「ふふふっ……」
「いつまで笑ってんだよ!」
「ごめんごめん。あんまりにも反応が可愛いから……ふふっ」
もー!!!
そんな笑うことねーじゃん!!
だって、人を好きになるなんて想像できねーんだもん!!
「笑いすぎ!!」
「ごめんね。でもあり得ないよね。ノラはずっとここにいて社長か私か伊藤さんとしか会ってないし」
「……」
何がどー転んであり得ないのかわかんなかったけど、とりあえず「そーだよ」と返した
「そしたらやっぱりどっか悪いのかも。気をつけないと」
「んー……って茜さん、仕事遅れるよ」
「あ、大変!じゃあまたね」
「うん」
パタパタと出て行った茜さんを目で追ってから「ふへー」と俺は机に凭れ掛かる
まだドキドキしてる
だってあんなこと言われるなんてびっくりして
やっぱり発想が女の子だよなぁ
すぐ色恋に発展する
でも、なんで俺茜さんに「あり得ない」って言われた時ちょっと考えちゃったんだろ
「……………」
好きかと聞かれれば茜さんや伊藤さんや……す、杉田さん……も、好きだけど
恋ってそういうんじゃないんだろ?
