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マーメイドな時間

第22章 寿司屋3

「お客さん、なにから握りましょ」


「あ、そうだな。ハマチ、赤貝、穴子、まずそれらからお願いします」


 人魚が頼めない。


 あの子、こっちを見てる。助けてと言わんばかりの眼差しで……。


 すまない……俺には助ける事は出来ない。


 ただの客なんだ。下手をすれば、あなたを食べてしまうかもしれない。


 あの子は俺を覚えているのだ。


 だから、俺が助けてくれるのを待っている。


 いや、これは無理だ。


 やり方を下手すりゃ、営業妨害になりかねない。


 ガラスのケースに人魚らしき切り身がある。


 これを頂いて帰ろう。


「すいません、この人魚もお願い」


「へい、かしこまりましたっ!! 活きがいいのありますけど、捌きましょうかい?」


「いや、結構だ。そこにあるのでいいよ」


 危なかった。あの子が捌かれるところだった。


 ん? あれ? よく見ると、この前いた天竜源一郎(あまたつみなもとのいちろう)がいない。


 どうしたんだ?



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