
私の心の1番綺麗なところに
第9章 サイゴ
隆太。
あのときは必要ないと思っていたけれど
いまはどうしてあのとき
ペンを持ってきていなかったのか、
とても後悔しています。
だって、それがあれば
あなたとすごした思い出のものが
ひとつ増えるから…
あのときはたしかに
いらなかったけど、
ペンがあればー…
そしてそのことを悔やむようになったいま
気づいたの。
私はあなたの文字さえ知らない。
綺麗なのか、汚いのか。
大きい字か、小さい字か。
細やかなのか、大胆なのか。
あなたの文字さえ
知らない私。
隆太との思い出が、
ペン一本なかったせいで、
後悔へと私を誘う。
いまでも知りたいのに。
知ることはできないんだね。
