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やくそくの その先へ

第5章 黄

おれはおれで 世を斜めに見て、いろいろな場所でいろいろな事を おれなりに 吸収して 自分の世界を 作っていた。

そんな人間にも 気の合う人間ができる訳で、京都に単身で行って、ホームシックになってる彼も その一人。
年上なのに、触れば切れそうなのに
ほっとけない人。

もう一人。レッスンの行き帰りが一緒の人。
気を使わないでいられる、おれが 自然に居られる 稀有なヒト。

世の中、心が安まる友人てのは 多く無くて良いと思う。
同じ空間で 違う事してても 存在を感じられる。
それだけで 十分 幸せだと 思ってる。


ある日、社長から連絡があった。
おれのデビューが決まったってさ。
違うな、おれ達の。だ。
はっきり言って、デビューは本意では無い。っていうか
したくない。
芸能の世界には興味は ある。そこで 仕事をしたいとは思ってる。
だけど、おれの中では、芸能=デビュー、では無いんだ。
だから、直談判に行った。
あいにく、社長は留守で、応接間の大きなテーブルの上には、良い香りの紅茶とキレイなケーキ。
それと、漢字一文字のグループ名……
多分 それが おれ達のグループ名だろう。

社長は おれ達が来るのが 分かってたんだろうか。

甘い紅茶を飲んで、甘いケーキ食べて、ピンとこないグループ名見て、2人の声が ハモって 応接間に 虚しく 響いた。

おれ達は 社長の手のひらで コロコロ転がらされていたんだ。
と 自分の手をじっと見ながら 思った。

あぁ… 今日も見えるよ。

指からのびる 黄色の 糸が。

隣を見ると 翔が頭を抱えてる。

その指にも 赤い糸。

















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