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今日も明日も

第60章 見えない鎖 part Ⅲ



いっぱい走ったつもりだった

僅かな隙をついて、やっと逃げ出せたと思ってた

だけどそれはただの思い込みで

まともに食べてもいなくて
殆ど動かなかった俺がそんなに走れるはずもなくて



「ー…なに、逃げてんの」

後ろから声がした、と思った次の瞬間には
顔に痛みが走って地面に倒れ込んでいた

痛い
この痛みは良く知ってる

だけど慣れる事なんかなくて
恐怖で動けなくなる

「あ……」

怖い
震える体を抑えられない

また殴られる
また、怖い事される

「ごめ…なさ…、ごめんなさ……っ」

「まだ逃げる選択があったとはね。バカのくせにそこは分かるんだ」

目の前の靴が消えた、と思えば今度は背中に重い衝撃

ああ、踏まれてるんだ

背中の傷に当たって、息が苦しい

すぐに靴は離れたけど蹲る体を無理矢理引き起こされる

きつく顎を掴まれて、上を向かされた

「あーあ、痛そう。可愛い顔が台無し」

言葉とは裏腹に、楽しくて仕方ないと言った笑みが恐ろしい

これから俺は、また酷い目に合う

この人に逆らったら…いけないのに

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