Beast 〜獣たちに好かれた僕〜
第15章 豪鬼
聖輝「ゔぅっ…!!」
ケル「お前…それ……」
聖輝「えっ…?」
ケル「何故…俺の名前を…?」
聖輝「えっあっあの…北島先生から…」
ケル「……。」
聖輝「あっあの……西園寺さ」
ケル「まさか…その名前を聞くとはな…」
聖輝「えっ?」
ケル「他の生徒の口から俺の名前が出てくるとは思わなかった。」
聖輝「さっ西園寺さん…?」
ケル「ここにいると大抵の奴は本名を失くす。」
聖輝「本名を失くす…?」
ケル「俺につけられた名前はケルベロス、いつの間にか西園寺翔は消えてケルベロスとして生きていくことになった。」
ケル「お前もそうだろ?ルーキー。」
聖輝「あっ…!」
ケル「最初は違和感ある名前でも、時が経つにつれ今度は本名を呼ばれることに違和感を持ち始める。」
ケル「俺の中にも西園寺翔という名前はいつの間にか消えていた。」
ケル「しかし、さが高を卒業すると同時にケルベロスという名前は消え、西園寺翔という名前だけが残る。」
ケル「本名と向き合うのに時間がかかり、やがて社会から逃げ出してしまう人間も生まれてくる。」
ケル「それがさが高の呪い。」
聖輝「さが高の…呪い?」
ケル「呪いから脱出するのは不可能と言われている、そう…異名に執着するほどな。」
聖輝「執着…」
ケル「ケルベロスになってから、俺のこと本名で呼んでくれたのはお前が初めてだ。」
聖輝「それまで…ずっと…ケルベロスって呼ばれていたんですか…?」
ケル「…いつの間にか本名と別名が逆転したからな…」
聖輝「…何か…悲しいですね…」
ケル「ん?」
聖輝「本名がなくなるって…悲しいですね…」
ケル「……。」
聖輝「…分かりました!僕…これからあなたのこと西園寺さんって呼びます!」
ケル「は?」
聖輝「そうすれば本名を失くさないで済むでしょ?うん、そうしよう!」
ケル「断る。」
聖輝「遠慮しなくていいんですよ、あっ分かった!本名で呼ばれるのが恥ずかしくて照れてるんですね。」
ガッ!!
ケル「殺す。」
聖輝「ひぃっ!!じょっ冗談ですよ!!」
ケル「……。」
こっ怖すぎる…!!