Beast 〜獣たちに好かれた僕〜
第18章 渋谷先輩
櫻井「聖子ちゃん、こっち来て。」
聖輝「えっ?」
櫻井「見て。」
聖輝「…わぁ…!!」
テラスから見える景色は湘南の海に夕暮れが差しかかっていて、街全体が淡いオレンジ色に光っていた。
聖輝「綺麗……」
こんな綺麗な場所があったなんて…
櫻井「聖子ちゃん。」
聖輝「はい。」
チュッ
聖輝「んっ…?!」
櫻井「聖子ちゃん…愛してる。」
聖輝「翔くん……」
まっすぐな目をしてる…
こんな人に…これ以上…嘘はつけない…
聖輝「あっあの、翔くん……あの」
〜♪♪♪
櫻井「ちょっとごめんね。」
ピッ
櫻井「はい、櫻井です。」
聖輝「……。」
櫻井「はい…はい……分かりました、失礼します。」
ピッ
聖輝「あの…翔くん…?」
櫻井「ごめん、今から会社に戻らないと…」
聖輝「会社ですか?」
櫻井「うん、急遽会社の取引先の人と会食が入ったんだ。」
聖輝「そうなんですか…」
櫻井「ごめん…せっかく聖子ちゃんとデートしてたのに…」
聖輝「いえいえ、お仕事のお付き合いだったら仕方ないですよ…」
櫻井「聖子ちゃん…今度さ、一緒にここに泊まらない?」
聖輝「えっ?」
櫻井「この別荘さ…俺が設計立てて…俺のお金で作ったんだ。」
聖輝「翔くんが…?」
櫻井「うん、特別な時だけここに来ようって…特別な人だけ連れて来ようって思ったんだ。」
聖輝「それって…もしかして…」
櫻井「ここに連れてきた人は聖子ちゃんが初めてだよ。」
櫻井「俺にとって聖子ちゃんは特別だから…大好きな人だから…一緒に過ごしたいんだ。」
聖輝「でっでも…私…」
櫻井「聖子ちゃん…まだ俺に言えないの?」
聖輝「……。」
櫻井「俺って…そんなに頼りない?」
聖輝「いっいえ、そんなこと…」
そんなことないけど……
櫻井「……ごめん、そろそろ出ないと間に合わない。」
聖輝「あっ…はい…」
僕は櫻井様の車に乗って家まで送ってもらった。
その間、僕達は一言も会話を交わすことはなかった。