トクベツ、な想い
第7章 7
「…こういうハグは男同士でも普通にするだろうが…変なことじゃないし、どんな遠慮してんだよ」
「…そうだね…前も友情のハグ、したもんね」
「そうだよ」
安心させるようにポンポンと背中を叩いて離れた
お互いに笑って一息つく
「行くか」
「…うん」
短い言葉を交わし俺と潤は路地裏を出た
マンションの前に着くと
後ろから着いてきていた潤の足が止まった
その気配に後ろに振り返る
「…どうした?」
「本当にごめんなさい、翔くん」
「もういいって」
「…今度から翔先輩って呼ぶね」
「え…なんで」
「んー…やっぱ友達でも年下だし…」
くん付けで呼ばれ慣れてそっちの方が違和感あるんだけど…
なんか距離を置かれた感じ…
たぶん…そうなんだろうな
そうやって線を引かないときっと苦しいんだろうな…
これで良かったのだろうか…
ホントにこれで…
「せんぱーい」
「うおっ、な、何?」
「ぼーっとしてたけど」
「いや、なんでも…
…先輩呼びなのにタメ口なの?」
「あ…そういえば…なんでだろ、すいません」
「いや、それはそのまんまでも」
「……ダメです」
足早にマンションに入っていく後ろを着いて歩く間、ちょっと考えてた
路地裏にいたさっきまでの俺の感情を
潤が離れていきそうな時、切ない気持ちになった
行くなって素直に言葉に出た
そこまではきっと友情でもあり得ること
キスされた時、そもそも男にされて気持ち悪くないことに驚きだった
偏見がないにしてはいきすぎというか…
オカマさんにほっぺにキスされただけで鳥肌が立ったのに…あれはまた別か…
無意識にもっとされたいと思ったのは…友情………ん?
…次、次っ
最後に好きだと言われた時…
みゆちゃんよりもドキドキしてた
おかしい…
俺は…女の子が好きなはずじゃ…
「じゃあまた、翔先輩」
エレベーターが2階で止まっていた
笑顔で手を振られる
俺はそこから降り、にこっとしてエレベーターが閉まるのを見届けた
潤の告白を聞いて?
いや、違う…この感情はもしかしたら前からちらちら潤に向けられてたんじゃ…?
ただそれがそういうことだって
気付かなかっただけで…