おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第35章 忙しい連休(その1)。
「連休前でカップルの行きそうな所は混んでるだろう」と言う、お二人の予想で、アタシ達はお洒落な場所を避け、オジ様達が好みそうな赤提灯が掲げられている、裏通りに面したお店に入る。お二人はそこで飲んで帰る事もよくあるらしく、お店の人と顔見知りだった。
おしぼりを運んできた店員さんに、「いつもはガラガラなのに、今日は混んでるね」なんて憎まれ口を叩きながら、リラックスした顔をするお二人。そう言えば、この三人でご飯を食べるのは初めてだ。と言うか、仕事帰りにお二人と一緒になったのは、お花見の時以来かも知れない。
「ねぇ、モリーもさ、社会人になったんだし、偶には朝帰りしてみたらぁ?」
そう言って川上さんが、「ふふふ」と笑う。何か企んでいそうな笑顔に、アタシは戦々恐々とした。
「コラコラ、モリリンを脅すんじゃないよ?」
山岡さんがそう言って突っ込むと、川上さんは「脅しじゃなくて誘惑なんだけどぉ?」と言って口を尖らせる。またわちゃわちゃが始まるのかと思ったが、川上さんは「ま、いいやぁ」と言ってメニューを開くと、アタシに手渡してくれた。山岡さんの奢りだから、一番高いのを選んでもいいよ、なんて冗談を言いながら。