逢いたいから~恋とも呼べない恋の話~
第4章 闇に響く音
これは亜貴には到底言えないが、隆平自身、亜貴との関係に見切りをつけたいと思っていたのではないか。だからこそ、真実を渡りに船と打ち明けたのだ。萌は従姉の話を聞くにつけ、そう思えてならなかった。
―全く馬鹿にしてる。
会話の合間に、烈しい嗚咽が混じる。
電話を握りしめ、号泣している亜貴の姿が眼に浮かんだ。
萌もまた、腹が立ってならなかった。亜貴と隆平は二年も続いていたのだ。ということは、隆平は亜貴と知り合った時、既に内縁の妻と子どもがいたということになる。たとえ正式に結婚していなくても、妻子持ちの男が亜貴を二年間も都合の良いように利用するだけしたなんて。
亜貴はOL生活で貯めた貯金を切り崩して隆平の〝学費〟に当てていたのだ。実は、その〝学費〟がすべて隆平の女と子どもの許へ流れていたとは! 萌には一度も口に出さなかったけれど、亜貴はその一方で、毎月少しずつ、結婚式の費用にとなけなしの金を積み立てていた。亜貴が隆平との結婚を真剣に考えていたのは明らかだ。
―写真学校にも電話してみたのよ、私。この際だから、全部すっきりさせてやりたいと思って。そうしたら、何と、笑わせるじゃない。もう一年近くも前に、隆平はスクールを辞めてるって言われたわ。
最早、言葉はなかった。
ただ烈しい憤りとやり場のない哀しみが萌を支配した。
この腹立ちは何に対してのものなのか?
あんな男は止めた方が良いという忠告を聞こうともしなかった無謀な従姉へのもの? それとも、大切な従姉を良いように利用して使い捨てた屑のような男に対しての?
自分でも定かではなかった。
「これから、そっちに行こうか?」
控えめに提案しても、亜貴はただ泣くばかりだ。しばらくして、存外にしっかりとした口調で応えた。
―良いの。あんな男、誰にでも熨斗つけてくれてやるわよ。萌ちゃん、私が馬鹿だった。萌ちゃんが言うように、あの時、別れてれば良かったのにね。
〝あの時〟というのが、例のアダルトDVD事件の発覚したときだというのは判った。あの頃、亜貴は隆平と付き合い始めて丁度半年経った頃だった。確かに、あのときに別れていれば、亜貴はここまであの卑劣な男に利用し尽くされることはなかっただろう。
―全く馬鹿にしてる。
会話の合間に、烈しい嗚咽が混じる。
電話を握りしめ、号泣している亜貴の姿が眼に浮かんだ。
萌もまた、腹が立ってならなかった。亜貴と隆平は二年も続いていたのだ。ということは、隆平は亜貴と知り合った時、既に内縁の妻と子どもがいたということになる。たとえ正式に結婚していなくても、妻子持ちの男が亜貴を二年間も都合の良いように利用するだけしたなんて。
亜貴はOL生活で貯めた貯金を切り崩して隆平の〝学費〟に当てていたのだ。実は、その〝学費〟がすべて隆平の女と子どもの許へ流れていたとは! 萌には一度も口に出さなかったけれど、亜貴はその一方で、毎月少しずつ、結婚式の費用にとなけなしの金を積み立てていた。亜貴が隆平との結婚を真剣に考えていたのは明らかだ。
―写真学校にも電話してみたのよ、私。この際だから、全部すっきりさせてやりたいと思って。そうしたら、何と、笑わせるじゃない。もう一年近くも前に、隆平はスクールを辞めてるって言われたわ。
最早、言葉はなかった。
ただ烈しい憤りとやり場のない哀しみが萌を支配した。
この腹立ちは何に対してのものなのか?
あんな男は止めた方が良いという忠告を聞こうともしなかった無謀な従姉へのもの? それとも、大切な従姉を良いように利用して使い捨てた屑のような男に対しての?
自分でも定かではなかった。
「これから、そっちに行こうか?」
控えめに提案しても、亜貴はただ泣くばかりだ。しばらくして、存外にしっかりとした口調で応えた。
―良いの。あんな男、誰にでも熨斗つけてくれてやるわよ。萌ちゃん、私が馬鹿だった。萌ちゃんが言うように、あの時、別れてれば良かったのにね。
〝あの時〟というのが、例のアダルトDVD事件の発覚したときだというのは判った。あの頃、亜貴は隆平と付き合い始めて丁度半年経った頃だった。確かに、あのときに別れていれば、亜貴はここまであの卑劣な男に利用し尽くされることはなかっただろう。