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逢いたいから~恋とも呼べない恋の話~

第4章  闇に響く音

 亜貴は一人っ子なのに、いつも他人から〝いちばん上のお姉さんでしょ〟と言われる。恐らく面倒見の良い姐御膚のところがして彼女をそう見せているのだろう。
―仕切り屋って、損な性分ね。
 とも。
 そんな亜貴だから、たとえ年下とはいえ、二年も同棲した隆平との関係はできるだけ早くきちんとしたものに―結婚したいと―と考えていたはずだ。だが、見かけによらず、細やかな気遣いのできる亜貴は、隆平が写真学校を卒業するまで、或いはプロのカメラマンになるという夢にもう少し近づくまではと遠慮していたに違いない。
 もっとも、女のヒモ同然の暮らしを送るあの良い加減な男に、そもそも夢や目標があったかどうかは疑わしいものだけれど。
 亜貴の切ない女心を利用した挙げ句、裏切った男を、萌は到底、許せなかった。
 やはり、亜貴のヌード画像が流失したあの事件の時、もっときつく言ってでも、あの男と別れさせるべきだったのだ。たとえ大好きな従姉に嫌われることになったとしても、亜貴があの下劣な男に泣かされるのを見るよりはマシだった。
 従姉の何度目かの恋は、こうして終わった。十五歳年下の恋人には、実は別の女との間に子どもまでいた―という実に低俗な昼メロドラマか不倫小説のような顛末を迎えて。

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