逢いたいから~恋とも呼べない恋の話~
第5章 再会
そんな叔父の方をひな壇の亜貴は心配そうに見つめているが、感極まっている叔父は一向に気づいていないようだ。
「やっと行ってくれたね。可愛い一人娘を嫁に出す気持ちは判るけど、ちょっとウザくない?」
隣のユッコが耳打ちし、萌は小さく肩を竦めて見せた。かく言うユッコもまた、叔父の長話に付き合わされ、閉口しているクチだったのだ。
萌はといえば、やはり、ユッコと同様、叔父の長々と続く想い出話から解放され、正直、ホッとしていた。思わず小さく息を吐いたそのときだった。
萌の座るテーブルの横に、カメラマンが来た。カメラマンは長身の男性で、男性はモーニング、女性はフォーマルなドレス姿や着物が目立つ招待客に合わせたのか、背広を着ている。が、ノーネクタイなので、やはり砕けた印象は否めない。
萌のすぐ傍でしゃがみ込でシャッターを切り続けるカメラマンは、今は披露宴会場全体を撮しているようだ。連写する音が聞こえている。
カメラマンが立ち上がろうとして、テーブルの角にぶつかった。弾みで萌の前のグラスが倒れ、淡い蒼色のテーブルクロスに染みがひろがる。
「す、済みません!」
カメラマンの狼狽えた声が降ってきて、萌は首を振った。
「大丈夫です、グラスには殆ど残っていませんでしたから」
何の気なしに座ったままの体勢で見上げた萌は、思わず声を上げそうになった。
まさか、こんな場所で?
懐かしさとほろ苦さの混じった複雑な気持ちが渦を巻く。
一年前、もう二度と逢うことはないだろうと自分から断ち切った想いが胸に蘇る。
田所祐一郎と萌が出逢ったのは、ほんの偶然だし、しかも彼にとって萌は、彼の伯父の経営する小さな写真館を訪れた客にすぎなかった。その日、たまたま、写真館を留守にしなければならなかった伯父に代わり、祐一郎が店番を任されていたお陰で、萌は彼にめぐり逢えたのだ。
小さな町角の写真館は、煉瓦造りの蔦が絡まる古めかしくも瀟洒な建物で、萌はいつもその前を通る度に中に入ってみたいという欲求に駆られていた。しかし、そんな機会もないままだった。
「やっと行ってくれたね。可愛い一人娘を嫁に出す気持ちは判るけど、ちょっとウザくない?」
隣のユッコが耳打ちし、萌は小さく肩を竦めて見せた。かく言うユッコもまた、叔父の長話に付き合わされ、閉口しているクチだったのだ。
萌はといえば、やはり、ユッコと同様、叔父の長々と続く想い出話から解放され、正直、ホッとしていた。思わず小さく息を吐いたそのときだった。
萌の座るテーブルの横に、カメラマンが来た。カメラマンは長身の男性で、男性はモーニング、女性はフォーマルなドレス姿や着物が目立つ招待客に合わせたのか、背広を着ている。が、ノーネクタイなので、やはり砕けた印象は否めない。
萌のすぐ傍でしゃがみ込でシャッターを切り続けるカメラマンは、今は披露宴会場全体を撮しているようだ。連写する音が聞こえている。
カメラマンが立ち上がろうとして、テーブルの角にぶつかった。弾みで萌の前のグラスが倒れ、淡い蒼色のテーブルクロスに染みがひろがる。
「す、済みません!」
カメラマンの狼狽えた声が降ってきて、萌は首を振った。
「大丈夫です、グラスには殆ど残っていませんでしたから」
何の気なしに座ったままの体勢で見上げた萌は、思わず声を上げそうになった。
まさか、こんな場所で?
懐かしさとほろ苦さの混じった複雑な気持ちが渦を巻く。
一年前、もう二度と逢うことはないだろうと自分から断ち切った想いが胸に蘇る。
田所祐一郎と萌が出逢ったのは、ほんの偶然だし、しかも彼にとって萌は、彼の伯父の経営する小さな写真館を訪れた客にすぎなかった。その日、たまたま、写真館を留守にしなければならなかった伯父に代わり、祐一郎が店番を任されていたお陰で、萌は彼にめぐり逢えたのだ。
小さな町角の写真館は、煉瓦造りの蔦が絡まる古めかしくも瀟洒な建物で、萌はいつもその前を通る度に中に入ってみたいという欲求に駆られていた。しかし、そんな機会もないままだった。