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teardrop

第3章 3滴

失神した透花の意識は暗い場所にいた。

『…ここは目覚めたらいつも忘れる、あの夢の中?…でも、何かいつもと違うような』

そう思いながら薄暗いまどろみの中を見渡していた。

静寂に紛れて透花を優しく呼ぶ声が響く。

「…花…透花…」

辺りを見回しても誰もいない。

透花は尋ねる。

「私を呼ぶのは誰?ここはどこなの?」

声が響き渡る。

「ここは不完全な存在の場所…私も…」

透花の目の前にぼんやりと人影が現れる。

薄暗い中に感じる人影は遠くにいるのか小さいのか判別できない。

「暗くて、よく見えない…」

透花がもっとよく見ようとすると、周りに壊れた人形のような何かが見えてきた。

人影はいつの間にか背後にいて、透花の目を左手で包むように塞ぐ。

「…透花はこの世界を見ちゃいけない。目を閉じて」

視界を遮られた透花は不思議と身を任せるように目を閉じる。

すると、体が軽くなりフワッと浮いた感じがした。

声の主が囁く。

「私は透花の事は何でも知ってる。今、透花は心、体…辛くて痛い」

黙ったまま小さく頷いた透花の目から涙がこぼれ落ちた。

声の主は更に囁く。

「私はまだ不完全…透花を救うにはもう少し時間がかかる。けど、必ずアナタの力になる。だから…さぁ、もう目を覚ましなさい…そして、目覚めたらこの場所を忘れて」

透花の意識はその場所から螺旋を描くように浮き上がっていく。

そして今居た世界や誰かとの会話の記憶が意識から剥がれ落ちていった。

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