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捨て犬

第15章 目、つむって・・・

「エミ?」


「うん」


「電話、遅くなってごめんな?」


「・・・うん・・」


「大丈夫?」


「・・・・」


こーゆー時
電話は表情が見えないから

嫌いだ


「もう寒くないか?」


「寒い」


「風邪ひいたのかな・・
あったかいパジャマ着てるか?」


「うん」


「今日はそんなに
寒くないのにな・・」


「寒い」


「じゃあさ、布団に入ってろよ」


「うん」


がさがさと
布団に入る音が
電話の向こうから聞こえて
それから俺は
エミを落ち着かせようと
しばらく
なんでもない話をしたりした

電話を切ったら
また寂しがるだろうから


「エミ?
もう寒くないか?」


「寒い」


「熱でもあんのかな・・」


「寒いよ・・カズマ・・」


「あぁ・・えっと
どうすっかな・・
体温計とかあったかな・・」




「背中が・・寒い・・」




「エミ・・・」




「・・・・」




まだ早かったんだ


エミを
一人にするなんて。



ごめんな

ひとりにして・・


社員旅行なんか
病欠にすればよかったんだ



こないだ
飲み会で遅くなった時も
後ろから
抱きしめて欲しかったって
言ってたのに


何やってんだ




そんな簡単なことが
今は
してやれなくて
もどかしくて

自分に腹がたつ



ごめんな


エミ




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