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捨て犬

第17章 もっと・・近くに

翌朝

目が覚めると
エミはもう
布団の中にはいなかった

「おはよ」

薄眼を開けて
声の方に目をやると
エミは
マグカップを
両手で持ちにくそうにしながら
何かを飲んでいた

「ん…おはよ……ココア?」

「うん」

「寒いのか?」

「うん」


「俺も寒い・・・
そりゃそーだよな?
はだかんぼだし(笑)」

ちょっと布団をはいで
俺が笑って見せると
エミもクスッと笑った


それだけで
幸せ


それから俺は服を着て
エミの入れた
コーヒーを飲みながら
タバコを吸った

「今日さ、何時でもいいから
パン屋に行って
おばさんに治療代渡して来いよ」

「うん」

そう言ってエミは
自分の給料袋から
金を出し始めた


まぁ……

それはそれで
いいか


頑なになってた
俺も
いけなかったかも知れねぇな


エミが金を出して
俺の顔色を伺うような
表情をしたから

俺が
少し微笑んで
かまわねぇよって
小さく頷いてやると

エミは
ほっとした顔で
頬をゆるめた


いいんだよな


エミがさ
心地よければ
それで。

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